軽便鉄道の築堤の下に、一軒の民家がひっそりと建っている。庭先には洗濯物が干され、暖かい春の日差しを浴びていた。
当時、浜松郊外に自然豊かな里山があった。やがて各地で繰り広げられたのと同様に、丘陵は削られ、広大な宅地へと姿を変えていった。昭和30年代は、都市近郊にそんな里山がまだ息づいていた最後の時代だったかも知れない。
昭和30年代のをカラーにしてみると、写真を見ているというより、あの時代の空気の中へ戻って行くような感覚になる。
遠州鉄道奥山線の春爛漫の奥山駅をRM LIBRARY 第10巻に掲載したのは2000年5月でした。1963年4月30日に部分廃線となった奥山~気賀口間。これまで奥山駅は写真集でも取り上げてきたので今回の情景集には掲載されていません。秋までにこの廃線区間と奥山駅にまつわる話を纏めようと思っています。
爽やかな朝の陽を浴び、電車スタイル踏襲のキハが客車1両を牽いてラッシュ時に活躍していた。今の時代に思うのは、あの貧しい時代の日本でも何か元気を感じるものがあった。