案内文章

高度成長期に突入した1960年代は、地方私鉄の廃線が次々と続いた10年間であった
「終焉の地方私鉄」を全国に追い求め、
空腹と闘った旅で撮り溜めたネガ。
そんなネガを掘り起し、地方私鉄の1960年代
回想してみました。

2023年8月18日金曜日

とさでん 明見橋あたり

 後免町行き電車が高知市の郊外に入ると一変し、川や小高い丘や田畑に沿って曲がりくねった道路の路側軌道がしばらく続く。特に明見橋あたりは花巻電鉄のような軒下かすめる軌道線ムードがあり、砂利に埋もれた軌道がローカルカラー満点であった。このあたりの路側軌道は現在も健在だが、沿線にあった味わい深い建物が消え今はスッキリした風景になっている。



電柱に表示された駅名明見(みょうけん)橋。1969.5.5
よく見ると鯉のぼりが。その下にある旗は高知の風習「フラフ」だそうで、いろいろ図柄があるようだ。


明見橋の裏に拡がる田園風景。



2023年8月15日火曜日

湯野町行の電車


伊達駅前を出た電車は聖光学院前でクルッと向きを変え、東北本線を越えて湯野町へ向かうと明神町まで沿線に人家はなく果樹園と田畑のみ。一直線の道路脇をコトン・コトンかなりのスピードで走る。明神町で道路と分かれて専用軌道に入ると小さな鉄橋を渡り、蔵の横をカーブし温泉町の家並みに入った。湯野町駅に到着した電車は運転手と車掌が入替わり乗客を乗せるとすぐに発車し、雪景色の家並みの中に消えて行った。
福島交通軌道線 1966年12月


明神町~湯野町 1966年12月

1966年の大晦日に訪問した記録や写真によると明神町から湯野町まではカーブがある変化にとんだ専用軌道だった。しかし廃線後の航空写真では軌道跡らしき小径は一直線となっていてツジツマが合わない。この区間の撮影場所で唯一確定できたのは小川を渡るこの一枚↓であった。湯野町を発車した長岡行が小川を渡りその先の直線区間を走って左にカーブすると明神町に到着する筈だ。

夏の湯野町~明神間 1964年7月 撮影:田辺多知夫氏

2023年8月10日木曜日

那須おろしの冷たい風 東野鉄道

 黒羽から代行バスで大田原へ戻る途中、車窓に見えた那須連山を望む運休区間が素晴らしい風景であった。この日検査を終えた元津軽鉄道のDC機関車が試運転でここを走ると聞き暫く待機していたがDC機関車はやって来なかった。
台風で破壊された蛇尾川の橋梁は大田原駅のすぐ近くにあり懸命な復旧工事が真っ盛り。大田原で客数人を乗せた区間運転のキハ501を撮りながら西那須野に戻ると日がすっかり落ちていた。44年後の2010年12月に黒羽近くの廃線跡を訪ねると、那須連山から吹く冷たい風と風景はあの時のままであった。

撮影:1966.12.30
検査上がりで出てきた元津軽鉄道のDC202。黒羽 


運休区間にあった中田原駅。

西那須野~大田原間を一日6往復するキハ501。

影が長くなって日が暮れ始めた頃。西那須野近く


茶臼岳から連なる那須の山並みを背景に大田原へ向かう廃線跡。白旗城址前停留場はこの辺り。2010.12.8

黒羽へ向かう廃線跡。  
廃線跡(道路)の先を右へカーブすると元黒羽駅に到着する。黒羽の町には那珂川が流れ、対岸に那珂川沿いに八溝山へ連なる山並みが続く。2010.12.8

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以上はTMS933号に掲載した「地方私鉄 失われた情景」第4回の後編で現在発刊の準備中です。前編はこんな↓でした。

1966(昭41)年の12月、東北本線西那須野から出ていた東野鉄道を訪問すると、台風で破壊された蛇尾川鉄橋の復旧工事中で大田原から終点黒羽まで運転休止中であった。代行バスに乗って黒羽駅に到着すると駅はひと気がなく静まり返っていた。
那須の山並みから吹いてくる12月の冷たい風、青空の白い雲、日が傾き始めた午後の日差しがさす構内には元2軸ガソリンカーの客車、津軽鉄道からやってきた奇妙なDC機関車、元国鉄気動車などが点在し、けだるい眠くなるような黒羽駅であった。正月明けには復旧して元の黒羽駅に戻ったようだ。



2023年8月5日土曜日

地を這うような客車ハボ

私の車両写真の目的は模型資料で、西大寺鉄道の車庫を訪問した時に真っ先に車両写真を撮ったのは地を這うような客車ハボであった。一体どんな小さな台車を履いているのか? 
軽便の魅力の一つは地を這うような客車で、これを如何に模型に再現するかだけど未だに私の模型は出来ていない。

撮影:1962.7.29
ハボ3


ハボ14


ハボ3の台車.WB840 車輪径420 457(車両竣工図)





西大寺鉄道ハボ 1/87
本日見てきた服部英之さんのジオラマ,レイアウト作品展.