2026年2月19日木曜日

泗水(しすい)の朝

熊本電鉄 1967年春
あの朝、ホームに犬がいても誰も驚かなかった。菊池からの上り電車が到着し、小学生の一団が改札へ向かう。犬は動かない。ただ、線路の向こうを見ている。

やがて下り電車が到着し、降りてきた男の足もとへ犬は迷いなく寄り添った。声もなく、尾を振るだけで迎えは済んだ。

改札の駅員も、運転士も、乗客もそれを特別な事にはしなかった。危ないと叱る者もいなければ、規則を持ち出す者もいない。私も何も感じなかった。それが当たり前の時代だった。
今になって思うのは、あの当たり前はもう戻らない。


菊池初の上り藤崎宮前行が到着するとホームに犬が一匹。

犬はホームに残り小学生の一団が改札口へ向かう。


やがて客車を牽いた下り菊池行が到着し電車は交換する。


到着した電車から降りてきた乗客に寄りそう犬。


電車が去り静まり返った駅に駅名表示「しすい」の文字が美しい。


6 件のコメント:

  1. いつも更新を楽しみにして、待っています。 
    本日の「犬くん」、そうだったよな… 
    と記憶の奥から想い出を引っ張り出し、強く共感しています。
    「あの当たり前はもう戻らない」、そうですね。
    どうしてこんなになっちゃったのだろう。

    返信削除
    返信
    1. 大木さん
      嬉しいコメントをありがとうございます。
      素人写真+情景描写の文章だけではもの足りなくなり、
      そこから何を言いたいのかを始めてみました。
      目に見えるものだけでなく、目に見えない心の中や社会で何が変わったのか等。

      削除
  2. ラストの一行が沁みます。世の中のあちこちで感じることでもありますね。変わったのは人の心なんでしょうか。

    返信削除
    返信
    1. Cedarさん
      最後の一行が狙いで、感じて貰えてありがとうございます。よい事、よくない事は、昔と今のどちらの時代にもありますね。

      削除
  3. 熊電版ハチ公ですね。優しい世界。

    返信削除
    返信
    1. 匿名さん
      正にハチ公ですね。こんな優しい事も、悪い事もあったゆるい時代。

      削除